佐藤 欣裕
もるくす建築社

ゆらぎを取り込む。

僕が大切にしている言葉に「ゆらぎ」があります。
もともと人間には恒常性という、外の変化に対して自らを一定に保とうとする機能が備わっています。そのせいでしょうか、僕たちは自然がもたらす流れや、変化の中に身を置くことで豊かさを感じることができます。だから建築は、外界の変化を「ゆらぎ」としてゆるやかに許容しながら、安定した器であることが求められます。

自然の律動を感じながら、住まいの中でどう快適に暮らすのか。お施主さんの要望と暮らし方のイメージ、敷地や気候といった環境要素を踏まえた上で、まず僕はファサードから構成します。ファサードには当然、開口部も含まれます。光をどの方向からどれだけ入れて、どこを遮るか。空気は建物のどこから入れて、どこで抜くのか。室内からは何を見せて、外から何を見せたくないのか。密接にからみ合うさまざまな要素を複合的に考える中で、開口部の位置や大きさ、窓の開き方が自ずと決まっていきます。

オール5の木製サッシ。

当然、窓に対する要求は高くなります。気密性能や断熱性能はもちろんですが、使い勝手、製品の安定性、特に木製サッシの場合は耐久性、メンテナンスなど、多岐にわたり非常に高い水準が求められます。僕は長らく木造建築を手がけてきて、これまでにさまざまなメーカーの木製サッシを使ってきました。正直なところ意匠性だけを求めるのなら、他社の製品でもいいかもしれません。けれども、先に書いたような長期にわたる安定性といった見えない部分までひっくるめると、やっぱりノルドなんです。国内でもベストな木製サッシだと思っています。

その良さはお施主さんにも広まっていて、木製サッシのことをメーカー名で呼ぶ方も多いんです。「ノルドのサッシは外せない」って。お施主さんがメーカーを名前で呼ぶほど愛着を持ってもらえる建材ってそうそうありません。

メーカーというよりエンジニア。

当社は設計だけでなく住宅施工も行っていますが、ノルドは施工に対する精度の高さとサポートも大きな魅力です。こちらが求める難しい要求に対しても高次元で応えてくれます。

たとえば以前、内から見ると入隅になったコーナーの2面に木製サッシを入れたことがありました。コーナーの納めはサッシのディテールとして悩ましいところです。検討を重ねて結局は構造を変えることで決着しましたが、それまでの技術的な応酬があり最終的に双方納得の着地点が見つかりました。建築の方まで入り込んで検討をしてくれる、そんな木製サッシのメーカーはとても珍しいと思います。その上で、取付が良いようビスの位置を付け変えるというこまやかなアレンジをしてくれるあたり、やはり自社工場を持つノルドならではの強みなんでしょう。僕がノルドに信頼を置くのは、メーカーというよりエンジニアに近い、こうしたスタンスが理由なのかもしれません。

DATA

佐藤 欣裕
もるくす建築社
https://molx.co.jp/


取材場所
美郷アトリエ


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