堀尾 浩
堀尾浩建築設計事務所

大きい、けれど狂いがない。

人と自然がつながる場所づくり。それが、建築に対する私の一つのテーマです。大きな開口部によって建物を外に対して開く、内と外をつなげるというのは、シンプルにそれを実現する有効な手段となります。

ノルドの木製窓を初めて使ったのは十勝のホテルを設計したときでした。雄大な日高山脈に対して開いた空間にするために、めいっぱい大きな窓がほしかった。そこで、大きくても熱損失の少ないをノルドの木製窓を採用しました。心配が一つありました。冬は氷点下20℃を下回る苛酷な環境下で木製サッシに狂いが生じてしまわないか。実は以前、他社の木製サッシでカーテンウォールを造ったことがあり、寒暖差で狂いが出て隙間風が入るという苦い経験があったからです。大きな窓であるほど、ちょっとした狂いもアダとなります。

でもね。まったくの取り越し苦労でした。ノルドの窓には狂いがないんですよ。不思議なぐらい反らない。何でだろうと聞いたら、材に秘密があるんですね。木製サッシに使う欧州赤松材は厳寒地で育つため木目が細かく、寸法変動が少ないらしいんですね。

空気でつながる。

そのホテルでもう一つ発見がありました。以前からホテルの客室は閉塞感があると感じていたので、ここは風を入れられる部屋にしたいと考えました。でも安全面から引き戸は使えない。そこでノルドから提案されたのが、フィックス(固定窓)の横に換気ガラリ窓を付けることでした。これなら小さな換気窓を開けるだけで空気の入れ替えができます。でも、効果はそれだけではありませんでした。

ミチルいえ

泊まった人が教えてくれました。朝、ガラリの窓を開けたら野鳥のさえずりが聞こえた、と。草のにおいが心地よかった、と。そうなんです。視覚だけではなく、人間は音や匂いでも外を感じるんですね。空気でつながることで、内に居ながら外を感じられる。これは大きな発見でした。

カタいところが似てるんだな。

ノルドにはそれから25年以上お世話になっていますが、使えば使うほどその良さを感じています。でも、ときどき「もう少し自由度があったら」と思うことも。たとえば住宅で、デザイン上あまり窓枠を見せたくないという場合があります。そこでノルドに窓枠をもう少し薄くできないか相談を持ちかけるのですが、いろいろ手は尽くしてくれるものの、結果的に窓枠の幅までは変えられないことが多い。

わかるんです。断面の寸法とか構造といったものは何十年もかけて研究してきた結果でしょうから。安全性や耐久性、気密性の担保が絶対。それが損なわれる可能性のあることはできないっていうね。そうなんだよ。それを一度曲げてしまったら、今まで積み上げてきたものは何だったのか?ということになるでしょう。そういうノルドのカタさっていうのは、考えてみれば私自身にもあって。それが建築に表れたりするんだよね。
まぁ、似たもの同士ってことなのかもしれません。

DATA

堀尾 浩
堀尾浩建築設計事務所
https://kihachi-hh.jp/


取材場所
喜八


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